こんちには、リンリンです。
以前このような記事を書きました
今話題のカーボンナノチューブとはどのような物質なのか、大学時代に研究を行っていた私が分かりやすく解説をするという記事です。
実は私、大学時代にカーボンナノチューブだけを研究してたわけではなく、「グラフェン」という物質も研究しておりました。
現在、様々な場所で話題になる「グラフェン」。どのような物質なのかを今回も分かりやすく解説しようと思います!
グラフェンとは
グラフェンの構造
グラフェンとは、炭素原子がハチの巣状に配置された構造を持っています。
この六角形のハチの巣構造をハニカム構造と言い、グラフェンのユニークな性質を生み出しています。
グラフェンを上に積み重ねると、黒鉛(鉛筆の芯)になります。
逆に黒鉛をセロハンテープで一層だけ剥がすと、グラフェンを作ることもできます。
グラフェンの性質
- 銅よりも高い熱伝導性
- 銅よりも高い電気伝導性
- 引っ張り強度が極めて高い(グラフェン一枚で4kgの重りを乗せれる)
- 折り曲げれるほど柔軟
- ガスを全く通さない
などなど、グラフェンの特殊な性質は挙げればキリが無いです。
今でも新たな性質が論文で報告されたり、他の物質との組み合わせでユニークな性質を示すことが報告されています。
カーボンナノチューブもそうでしたが、この幅広い性質が研究者を釘付けにする理由になっています!
グラフェンの応用
ではグラフェンはどのような分野で利用されているのでしょうか?
- タッチパネルの高性能化
- LED
- 太陽光電池
- 液晶画面
- パソコンの集積回路
- 電池
このように、電気が関わる部品に多く応用されていることが分かります。
電化製品や精密電子部品のコアになる部分を、グラフェンでパワーアップしようという発想ですね!
電池分野では、様々な電化製品や電気自動車なんかにも関わる最重要分野なので、グラフェンの応用研究が盛んになっています。
グラフェンの製法
グラフェンを作り出す方法は、大きく分けて4つあります
- 機械的剥離法
- SiCの熱分解法
- 酸化グラフェンの還元
- 化学蒸着法(CVD法)
何言ってるか分からないですよね!(笑)
一つ一つ簡単に、分かりやすく解説していきます!
機械的剥離法
これは最も分かりやすい製法です。
鉛筆の芯である黒鉛は、グラフェンが積層した構造を持っています。
その中の一層だけを取り出せばグラフェンの出来上がりという製法です。
高品質な黒鉛に、上からスコッチテープを押し付けて剥がします。
すると、スコッチテープにグラフェン張り付くわけです。
メリットは、
- 結晶性がいいグラフェンが手に入る
- 非常に簡便な方法
デメリットは、
- 小さく千切れたグラフェンが多く、大面積のグラフェンは作れない
- 2層・3層などが混じり、均一な1層のグラフェンを取り出しづらい
などが挙げられます。
今ではあまり使われていない手法です。
SiCの熱分解法
SiCとは、炭化ケイ素という物質で半導体材料として利用されています。
そのSiCを真空中や、あるガスの中で高熱に晒すと、Si(シリコン)だけが蒸発していきます。
すると残った炭素は、下にあるSiCと相互作用を起こしながらグラフェンとして成長していきます。
これがSiCの熱分解法です。
メリットは、
- 結晶性が良いグラフェンが作れる
- SiCの上にグラフェンが作れると役に立つことがある
デメリットは、
- SiC自体が高価
- 大量にグラフェンが作れない
などですね。
SiCの上にグラフェンが作れると、電子部品の応用で役に立つことがあるので、一部には重宝される製法になっています!
酸化グラフェンの還元
酸化グラフェンとは、黒鉛を強力な酸化剤で酸化することで作られる物質です。
黒鉛はグラフェンが多数積み重なった構造を持っていますが、酸化グラフェンになる過程で1層に分離してくれます。
1層になった酸化グラフェンを再び還元すれば、グラフェンを作り出すことができるわけです!
この製法のメリットは、
- 大面積のグラフェンを作ることができる
- コストが安い
デメリットは、
- 酸化の過程でグラフェンの骨格が壊れる
- 完全に還元しきることはできず、完全なグラフェンとは程遠い性能になる
この製法で作られたグラフェンは、構造の欠陥や不完全な還元度から「還元型酸化グラフェン」と呼ばれ、もはやグラフェンとは違う物質として扱われています。
化学蒸着法(CVD法)
この方法は、基板となる金属膜の上にメタンなどのガスを吹き付けることでグラフェンを成長させるという製法です。
メリットは、
- 超大面積のグラフェンを作れる
- コストが安い
デメリットは、
- 金属からグラフェンを剥がす手間が掛かる
- 未だ研究途上
ポテンシャルに富んだ製法であることは間違いないですね!
最先端のグラフェン研究
グラフェンは平坦ではない!?
グラフェンは、六角形のハニカム構造を持っている平坦な物質だと思われていました。
しかし、平坦なグラフェンは電子の状態が非常に不安定で、現実世界に存在できないと計算されています。
実はグラフェンは、海のようにうねりがあることが分かったのです。
うねることで構造がほんの少しだけ変化し、現実世界で安定して存在できるようになっているらしいのです!
不思議な物質ですね。
グラフェンを使って「30分でフル充電」のスマホが登場!?
韓国サムスンが、グラフェンを使ったバッテリーを採用したスマートフォンを2020~2021年に発売するという噂が流れております。
しかも30分でフル充電だとか・・・
もし本当だとすると、グラフェンはバッテリーのどの部分に用いられるのでしょうか?
- 電極
- 電解液のセパレータ
このどちらかだと思われます。
未だ実用化は大々的にされていなかったグラフェンが、スマートフォンのバッテリーに採用されるとなると化学界では激震が走ります!
是非もっと研究費を上げて、実用化を広げてほしいですね!
グラフェンで海水の淡水化?
グラフェンを使って、海水を淡水にしようという研究が盛んに行われています。
海水は、塩水ですよね。塩はNaCl(塩化ナトリウム)です。
このNaClを取り除くのが非常に難しいのです。
様々なアプローチがあるのですが、グラフェンを使って海水からNaClを取り除く方法があるらしいのです。
- グラフェンに非常に小さな穴をあけて、イオンは通さずに水分子だけを取り出す
- 酸化グラフェンで膜を作ると、NaClをブロックして水分子だけを通す
など、ユニークなアプローチが研究されています!
新たな海水の淡水化技術がグラフェンによって確立されるかもしれません!
乾燥地域では海水の淡水化が主な飲料水確保方法になっていますから、世界的にも非常に重要な研究ですね!
まとめ:グラフェンの今後に期待!
元専門家がグラフェンについて熱く語りました。いかがでしたか?
まだまだ研究途上と思っていたグラフェンも、色々な場所で製品化されつつあるのは意外だと思います。
これから「グラフェン」と聞いても、この記事を見たあなたならその大部分を知れています!
是非知人にどや顔でもしてくださいね!(笑)
では!
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